子育てに関する理論は星の数ほどありますが、今回は、オペアの方にもぜひ興味を持っていただけたらと思い、私が「そうだなあ、本当だなあ」と実感できる理論の1つである「愛着理論」に関してご紹介します。
「愛着理論」は有名な心理学者であるジョン・ボウルビー(John Bowlby)が1969年に発表した「母子関係の理論」の中で提唱する「Attachment Theory」と呼ばれるもののことです。
Attachment(アタッチメント)というのは、人間が執着するものであり、強い絆を感じる存在のことを指します。子供は生まれ出た後も、母親の胎内にいた時と同じように、母親と自分とが一体であるというような感覚を持っていると言われますが、それが徐々に自分が「お腹が空いた」「おむつが汚れて気持ち悪い」などと、様々な要求を表現するために泣いた際に、すぐに自分の要求を満たしてくれる「世話人」に強いつながりを感じ始めるのだそうです。
自分が何かを訴えるとそれに応えてくれる人の存在があると知ってゆくことで、子供は「世の中は安全である」そして「自分は愛されるべき人間だ」との実感を得ていくといいます。
2歳位までの間に、その中心的な世話人(母親、あるいは父親、またお世話してくれる家族メンバーなど)と、子供 との間にできた強い信頼感が培われてこそ、子供は次の世話人の存在、そして周囲の世界の友人や先生などに対しても安全を感じていくのだそうです。
子供にとってこの「世話人」の存在は絶対的な安全地帯となります。その姿が見えなくなることは不安ですが、でも必ず帰って来てくれる、そして要求を満たしてくれる、世界は自分を保護してくれるという自信ができていくのです。
この理論は後に発達心理学者であるメアリー・エインスワース(Mary Ainsworth)がAttachmentの行動のパターンを分類し、「安全の愛着」「回 避の愛着」、「不安の愛着」「混乱の愛着」にわけ、それぞれの子供の世話人との関係によって子供の取る行動を説明しています。
この2歳前後までの乳幼児時代に要求に応えてくれる「世話人」とのやりとりを通して「人間への信頼」を築くことのできなかった子供たちは、大人になって誰か別の人との信頼関係を作ろうとするときに苦労するのだそうです。(人間関係が築けないということではなく)
つまり、逆に言えば、この2歳までの短い間にどれだけの「アタッチメント」を得られるかによって、後の人間関係の形成の仕方にも大きな影響があるということです。
オペアの皆さんは、どういう大切な時期に「世話人」の一任を担うのだということを、忘れないでください。