学校に行かないで自宅で学習「ホームスクーリング」
オペアの皆さんは、「ホームスクーリングhomeschooling」という言葉を耳にされたことがあるでしょうか。これはまさにその言葉が示す通り、子供を学校に行かせないで、自宅で学習を行なう方法のことを指します。過去にはこのホームスクーリングを違法としていた州もあったようですが、現在では全州において合法になっているようです。学校に行くのが当然だと理解している日本人から見ると、学校に行かないで自宅で勉強するということは、非常に驚かされることではありますが、アメリカの教育省の調査によれば(2007年の調査結果)、5歳から17歳の就学年齢にあたる子供のうち、全体の2.9%にあたる約150万人がこのホームスクーリングで学んでいるそうで、1999年の85万人(全体の1.9%)、2003年の110万人(全体の2.2%)と比較しても、この数字は徐々に増加していることがわかります。
では、なぜ、学校に行かせない選択をするのか?その理由で一番多いのは、宗教的・道徳的な理由によるものだそうです。一般大衆の「世俗的」価値観から子供の精神を守るため、というのが大きな理由です。そして次に学校環境への懸念、そして一般の教育に対する不満と続きます。他にも、・家が学校から遠い(農村地域など)・健康面に問題がある・いじめなどの問題があり子供が不登校になった・保護者が英才教育を望んでいる
ホームスクーリングの中でも「アンスクーリング」と呼ばれるものは、教科書や学校環境に束縛されることを嫌うため、興味本位の学習を行なう手段を指し、「デスクーリング(脱学校)」と呼ばれる、学校組織に組み込まれるのを嫌う反体制主義により家庭での教育を選ぶ家庭もあります。つまり、子どもを学校というシステムに入れることをせず、家庭で子どもの教育を担おうとする決断の背景には、保護者自身の価値観へのこだわりや一般の学校に満たされない様々な思いがあるわけです。
ただ、学校へ行かないと言っても、こうした子供たちは、家で親や家庭教師などの指導の下、カリキュラムや時間割に沿って勉強し、年に一度は自主的に学力標準テストを受けて、習熟度チェックをしたりしますし、アメリカにはこのホームスクーリングをおこなう家庭を法的に支援するための民間団体として設立されたホームスクール法律擁護協会(HSLDA)ホームスクーリング関連のウェブサイト、ホームスクーラー向けの参考書や教科書、またそれを専門に販売する業者や店舗、インターネットスクールも多数存在していますので、学校へ通っている子供と比べて、学習力が劣っているといったようなことはないようです。
一例ですが、私の知り合いのお嬢さんは、高校生の年齢の時に地元のコミュニティカレッジのコースを終了して、一般の高校生より早く大学を終了してしまいました。こういう柔軟性が手に入るというのは、ホームスクーリングならではかも知れません。また自宅で勉強するというと、一瞬、閉鎖している、社会との接点がなさそうに聞こえますが、こうした子供達にも、地域の学校、図書館などは、学校に通う子供と同様にいろいろな活動を提供していますし、教会などのボランティアを積極的にやったりしながら、地域の子供たちと交流を図っているケースも多いようです。
親が先生代わりになると聞くと、なんだか大変そうだなぁ、と思ってしまいますが、ホームスクーリングが子供の教育のための選択の1つとして認められているというのは、教育の質を親がコントロールできるという点から見れば、ありがたい選択とも言えるでしょう。